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【ニューSCウオッチング】
  
「COREDO 日本橋」−先進の都市型SC開業で期待される日本橋の商業復権
執筆=(株)シーズ代表取締役 月泉 博 
この3月30日、東京・日本橋の東急百貨店日本橋店跡地に、三井不動産がデベロッパーとなり手がけた先進的都心SC「COREDO(コレド)日本橋」がオープンした。
 
同SCは今年1月竣工した20階建ての「日本橋一丁目ビルディング」の地下1階から4階部分を占める。店舗面積は約8,600u。

ここにファッション、雑貨、飲食店など都市型テナント34店舗が入居する。

施設名のCOREDOは、CORE(核)とEDO(江戸)をつなげた造語だ。もともと日本橋は五街道の起点であり、江戸の商業中心地として栄えた歴史・伝統を持つ。

しかし近年、同地区は特に夜間、休日が閑散とする典型的オフィス街区に変貌している。それに対し「COREDO 日本橋」には、改めて日本橋が東京(江戸)の商業の核になるという思いが込められている。

 さらに施設テーマの「時を越えて」は、百貨店や老舗に象徴される日本橋の商業の伝統を生かしつつ、これを現代的スタイルに解釈し提案していこうというもの。

 そうしたコンセプトのもと、同SCには衣・食・住・遊の生活シーン全般にわたり、個性と鮮度あふれるニューショップが高密度に集積されている。

全33店中、半数以上の18店舗が新業態や東京初出店テナントとなっており見所満載の施設である。
東急百貨店跡地に建設された「日本橋一丁目ビルディング」。「COREDO 日本橋」は同ビルの地下1階から4階部分を占める
中でも注目なのがソニープラザ最大店となる新業態「セレンディピィティ」(約700坪)と、玩具メーカーのタカラが展開する初の大型直営業態「ガレージ」(約300坪)だ。


3階を全面使用するソニープラザ最大規模の大型新業態「セレンディピィティ」の店内




タカラが展開する初の大型雑貨業態「ガレージ」では「Q−CAR」も販売されている
「セレンディピィティ」は性別、年齢を問わない自己スタイルを重視した大人に向け、高感度な家庭雑貨、インテリア、ギフト、食品、コスメ、バスアイテムに加え、ソニープラザ初となる本格的なメンズ/レディスアパレルの品揃えも含めたフルラインで臨む。

 また店内で展開されるフィレンツェ発で世界最古の薬局「サンタ・マリア・ノヴェッラ」や、オーストラリア発の自然化粧品「ジョリーク」のアロマテラピーサロン、カフェやフラワーショップなども見ものだ。


一方、「ガレージ」は遊び心あふれる複合業態として同SCの話題核になりそう。1、2階のメゾネット展開で大人の男性とその子ども・家族へ向けたエンターテイメントな場を提供している。


 1階には同社が開発した1人乗り電気自動車「Q−CAR」をはじめ、プロダクトデザイナー深澤直人氏が手がける「±0」など、さまざま面白グッズが集積する。


2階は6つのテーマ別に括られた生活雑貨がゾーンごとに展開されており見ているだけで楽しい。
その他にも、「プレッセ」(東急ストアのアップグレード型SM)による都市居住者とオフィスワーカー対象のフードマーケット、“大人向け”に絞りこんだセレクトショップの雄「ユナイテッドアローズ」のグレード感あふれる店づくり、或いはスペインの2つ星レストラン「サン・パウロ」やパリで人気のパン職人エリック・カイザー氏のベーカリーカフェ「メゾン・カイザー」などの注目飲食ゾーンも含めてその見所は尽きない。


1階のマグネット店は「ユナイテッドアローズ」
一方、日本橋周辺商業施設の動きもこのところにわかに活発化してきた。高島屋東京店は8年ぶりの全館改装を行い4月21日にリニューアルオープン、さらに10月には日本橋三越が店舗面積1万5000uの新館をオープン予定だ。

 というわけで、「COREDO」開業をきっかけに、日本橋がかつての中心商業街区としての賑わいを取り戻せるか否かにも注目が集まる。




地下鉄日本橋駅と直結される地下1階には、核店として東急ストアの高級SM「プレッセ」が導入されている


元祖3プライスメガネのゾフも都市型新業態「コンソメ」の1号店を出店

イトーヨーカ堂のヒット商品「メイド・イン・ジャパン」

しょせんニッチェ(すき間)企画に過ぎない
   
執筆=(株)シーズ代表取締役 月泉 博
イトーヨーカ堂のオリジナル企画である「メイド・イン・ジャパン」シリーズが、昨年5月の発売開始以来、絶好調の推移で評判になっている。

同シリーズは、ヨーカ堂のお家芸である「チームMD方式」により、国内のアパレル産地と共同開発したこだわりの商品群。「尾洲の紳士ジャケット」「浜松の婦人形態安定シャツ」「横浜のプリントスカーフ」などといった具合である。

 周知のように、海外生産品に比べコスト高な国産アパレル商品の販路は縮小する一方で、多くの国内繊維産地は存亡の危機に立たされている。

 そうした中、イトーヨーカ堂があえて国産品に着目した背景には、『安さより質を』という独自の基本戦略がある。

同社はイオンやウォルマート傘下の西友はじめ大手GMS各社がいっせいにEDLP(エブリディ・ロープライス)志向を強める中、「安売り路線とは一線を画す価値ある商品開発」を勝ち残り策の決め手と位置づけている。

 だから高品質を謳う「メイド・イン・ジャパン」は、中国等海外生産品に比べかなり割高な価格設定だ。にもかかわらず予想を上回る売れ行きで初年度(02年度)約100億円の売上を達成。これに気を良くした同社は、11産地・54品番でスタートした当初の品揃えから、家庭雑貨や食品を含む63産地・291品番(今春夏企画)にラインを拡大し今期は売上倍増の200億円を目指すという。

 たしかにデフレ下のエンドレスな低価格競争は、勝者なき不毛な結末を招きがちだ。もとより従来と同じ価値と機能しか提供できない商品のマーケットは、デフレによる価格低下に比例して縮小する。そうした限られたパイの奪い合いは、さらに底なし沼のような価格競争の悪循環を招く。

では「メイド・イン・ジャパン」が、そんな荒んだ戦いの舞台から、ヨーカ堂を解き放つ救世主になり得るのだろうか。率直に言ってそれはあり得ないだろう。

 同社のアパレル部門売上は約4000億円。仮に「メイド・イン・ジャパン」が今期目標(200億円)を達成してもそのシェアはわずか5%に過ぎない。だからといってその比率を2割、3割に引き上げ、同シリーズ商品で売場を埋めつくそうなどという考えもないはずである。

たしかに「メイド・イン・ジャパン」は、独自の発想と斬新なネーミング、(他のGMS商品にない)物珍しさで新たな需要を喚起した。しかし「ただそれだけ」のこと。しょせんはニッチェ(すき間)企画の域を出るものではない。

 さらにわが国におけるアパレルのマス市場で、単に品質で勝負する時代は終わったと筆者は捉えている。「海外生産商品=安かろう悪かろう」と捉える消費者は今や殆どいない。品質面で何の遜色もないことを一番良く知るのは消費者自身である。

 だから「メイド・イン・ジャパン」は、ニッチェであるのと同様、低価格海外生産商品に対するアンチテーゼに過ぎない。少なくともそれが主役になることは、(残念ながら)永遠にあり得ないのである。

 では今どきのアパレル商品の購買で何が決め手になるのか。言うまでもなく感性とセンスだ。現代のわが国市場で、食べ物が美味でなければ売れないのと同様、アパレルもカッコ良くファッショナブルでなければ消費者から見向きもされない。

特にアパレルの世界で、もはや使用に耐えぬような粗悪品など存在しないから、産地や品質にこだわるプライオリティ(優先順位)は低下する一方だ。

 話は変わるが、ヨーカ堂が季節ごとに流す衣料のテレビCM。いまどき信じ難いようなセンスのなさとダサさに驚きを禁じえないのは筆者だけだろうか。あれでは(莫大な経費をかけて)わざわざ企業のファッションイメージを貶(おとし)めているようなものだ(イオンのオリジナル衣料のテレビCMも似たようなものだが)。

 そうした時代錯誤的な野暮ったさが払拭されない限り、ヨーカ堂をはじめとしたGMSの衣料は永遠に浮上不可能だろう。

 いずれにせよ「メイド・イン・ジャパン」のようなマニアック(?)な企画も結構だが、その前に革新すべき戦略が、GMSのアパレル部門には山ほど残されているはずである。


【お断り】本稿は「販売革新2003年9月号」に収録された同様タイトルの筆者の論考を(なぜか削除された部分を原文のままとし)一部加筆・修正したものである。
米国追随型の商業開発時代は終焉した! 
執筆=(株)シーズ代表取締役 月泉 博

2003年も残すところあとわずかだが、このところわが国のマクロ経済と景気の先行きにはやっと薄明かりがさして来た。もっとも従来型の流通企業はその恩恵には与れず、来年も引き続き塗炭の苦しみを味わうに違いない。創造をはるかに上回る速度で、市場とニーズが激変しているからである。

 何がどう変わったのか。それは世界の中でわが国に先んじて訪れた「超成熟消費社会の到来」だ。
こと消費に関する限り、つまりモノやサービス購買時の価値観や選択眼において、わが国の大衆は世界史上でも例を見ないレベルに進化したと筆者は捉えている。

 にもかかわらず、市場では相も変わらず、売り手発想の効率優先、合理主義一辺倒の(クソ面白くない)小売業態が不毛な同質化競争に明け暮れている。『もう飽き飽きして見るのもうんざり』という消費者の声なき声が、なぜか彼らの耳には届かないようだ。

 少なくとも米国追随型の商業開発時代はもう終焉したはずである。だから今こそ声を大にして言いたい。わが国独自の超成熟消費時代を突破する業態・MDの『ジャパン・オリジナル』を確立せよと。

 『ジャパン・オリジナル』とは、買い物本来のエンターテイメント性を追求した、わが国市場だからこそ成り立つ、世界に類例のないニュータイプ商業を意味する。たとえばデパ地下やドン・キホーテ、ファッションで言えば渋谷109などである。

 ところで今秋オープンした伊勢丹本店メンズ館。これも『ジャパン・オリジナル』業態の傑作と言える。店作り、MDのテンションと完成度、レベルの高さにおいて、同館は(同じ伊勢丹が展開する米国生まれの)バーニーズをはるかに凌駕している。明らかに世界の頂点に立つメンズ専門業態と評価したい。

 一方、同館オープンと相前後して、米国の高級百貨店「サックス・フィフスアベニュー」の日本進出(正確には誘致)が伝えられた。今さらなぜこうした時代錯誤が飽きもせずに繰り返されるのか、というのが筆者の率直な感想である。

 チェーンオペレーションや物流システム、コスト管理といった売り手側の技術を別にすれば、日本の百貨店のMD開発力とエンターテイメント訴求は既に世界でも抜きん出た水準にある。

そうした国で、全量買い取り仕入れを前提にした米国式百貨店の、あの退屈な品揃えが通用するとはとても思えない。少なくともサックス・フィフスアベニューというストアブランドを認識し、それに憧れて群れるような消費者は、今の日本には殆どいないだろう。

 カルフールやコストコといった量販外資も同様。鳴り物入りで日本進出を果たしたものの、食品を主体にわが国の高度な消費ニーズに対応できず、苦戦に次ぐ苦戦を余儀なくされている。西友を傘下に収め、独自の展開を画策するウォルマートもどこまで日本で通用するのか、今のところ全く予断を許さない。

 それにもめげず(?)、たとえばカルフールは今秋、箕面市、尼崎市、東大阪市と立て続けに3店舗出店した。関西にドミナントを築き日本市場における最後の実験に着手したと思われる。おそらく背水の陣だろう。これがダメなら、日本からの全面撤退も大いにあり得ると筆者は見ている。

 いずれにせよ、一部特例(欧州のスーパーブランド)を除く外資小売業は、世界一高度で難しい市場を相手に真の正念場を迎えているのである。
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