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アメリカ新商業施設論 |
中心市街地の行方
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執筆=潟Aシュ計画事務所代表取締役 堀 泰生
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九州での実務研修を終えてやっと一息。研修生のがんばりには敬服するばかりである。
12名の研修生が3班に分かれて再生プランを練った。私の無理難題をわずか2週間の間にそれぞれの解を見つけてくれた。まだ未消化の部分は多く残っているが、十分すぎる成果を上げてくれたと思っている。
今年、経済産業省の人材育成事業の講師を任ぜられた。この事業は、箱ものや補助金目当ての組織をいくら作っても機能しない。市街地再生はやっぱ人である、という理由で立ち上げたものらしい。研修は座学で2週間(希望者は3週間)30人近い講師からみっちり知識を詰め込まれ、実務実習で2週間、すべて1日フルタイムと言う豪華版である。この実務実習がなかなかのもので、現実の閉鎖大型店舗をモデルに再生プランを作ろうというものである。因みに、今回の受講生は中小企業診断士、商業施設士、再開発プランナー他、都市再生に関しては十分なキャリアをもった面々である。継続事業だそうで来年度も募集するようなので興味ある人は是非とも参加のほどを。
この博多班の実習対象となったのが九州の某都市にある、再開発ビルである。5年前に華々しくオープンし、今は1店舗を残してすべての店舗が退店してしまった。活性化の拠点となるはずが、商店街衰退の促進役となってしまった。今聞けば計画の無謀さにあきれるばかりであるが、走り出したらなかなか止められないのがこれらの事業の特徴。今は、一日も早い再生が望まれている。
この街は、かっての中心市街地が環状道路の開発によって、廃墟になってしまった典型とも言える街である。確かに4万uを越える大型店が近年2店舗もでき、さらにもう1店計画されている。しかしこれは直接に見える影響であり、見えざる敵が区画整理により市街地に忍び寄っている。
行政は生活の利便、交通渋滞の解消etc.etc.で区画整理により環状道路を作った。ついでにこの道路沿いに大型専門店に都合の良い1反の方形の土地を作ってしまった。さらに、学校や病院をこの周辺に立地させた。誰も意図したわけではない。しかし結果として、車にとってもっとも便利な、市街地と住宅地である郊外の中間点(エクサーバン(exsurban)というらしい)に生活利便施設が立地してしまった。
これは、地方都市によく見られる例である。中心地にあった市役所、郵便局、市民病院など、こちらにどんどん移転させ環状道路を設けエクサーバン地区をどんどん便利にし、中心市街地から人を集め、郊外から中心地への流入をシャットアウトした。かってファミリーレストランやファーストフードで構成されていたロードサイド銀座が今やコンビニエンスストアーからスパーマーケットやアパレル、家電ほか、ありとあらゆる大型専門店の集積と化したのである。
さて、こうしたエクサーバンの大集積に対して、中心市街地は打つ手があるのだろうか。“幸いな”ことに虫食い状態の空き地とアーケードを備えた空店舗群と言う“財産”が残った。これらの“財産”をどう料理するのか。いよいよ、研修を終えた卒業生の出番だ。
中心市街地の再生は、これからである。卒業生諸君に大いに期待したい。
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